居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書
ケアとセラピーの違いについて意識しておくことは、日々の臨床において重要である。
著者の東畑開人さんによると、ケアとは「依存を引き受け、ニーズを満たすこと」だということです。そして、ケアとは「傷つけないこと」であり「基本的にに環境が変わること」だと定義します。
一方で、セラピーとは「傷つきに向き合い」、「ニーズを変更すること」が目指されるということです。そのため、セラピーとは「自立」を原理としており、「個人が変化していくこと」が目指されると説明します。
もう少し補足すると、以下のように表現されます。
「ケアは傷付けない。ニーズを満たし、支え、依存を引き受ける。そうすることで、安全を確保し、生存を可能にする。平衡を取り戻し、日常を支える。」
「セラピーは傷つきに向き合う。ニーズの変更のために、介入し、自立を目指す。すると、人は非日常のなかで葛藤し、そして成長する。」
そして、この本において、ケアとセラピーは対立するものではなく、人間関係における「成分」だと表現している点が、分かりやすいと思いました。カウンセリングにおいて、ケアはクライエントの生活を支え、セラピーは人生を支える。
なお、本書を通して探求されていることは、精神科デイケアにおいて、利用者とスタッフがそこに「ただ居ること」の難しさであり、その意義です。これからデイケアで働こうとしている心理士や実習生に、ぜひ読んでもらいたい一冊です。
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