言い訳と自己正当化の心理学
フェスティンガーの認知的不協和理論を知れば知るほど、その理論が臨床場面だけでなく日常生活の中で生かせることが分かってくる。
著名な社会心理学者2人による、『なぜあの人は 過ちを認めないのか 言い訳と自己正当化の心理学』原題:Mistakes Were Made (but not by me)は、“認知的不協和”が“矛盾”と、“認知的不協和の解消”が“自己正当化”や“言い訳”と言い換えられることを教えてくれる。また、“認知的不協和”と“確証バイアス”が引き起こす強力な作用についても教えてくれる。
多くの社会心理学の教科書では、フェスティンガーらが行ったカルト宗教の潜入調査や実験を例にとって認知的不協和理論が説明される。しかし、それだけではこの理論の理解は浅すぎるのかもしれない。
この本は、政治家だけでなく「普通の」人々が日々行っている自己正当化の例を豊富に示すことで、読者の誰一人として“自己正当化”と無関係ではないことを理解させる。
書籍中では、偏見、記憶、結婚生活、暴力、和解といった日常的な問題に加えて、心理療法や司法における冤罪、自白の問題も扱われている。そして、人があやまちを認めて不協和とともに生きていく方法も提示する。
加えて、スタンレー・ミルグラムの権利への服従実験を、認知的不協和理論の観点から説明している部分も興味深い。
私は読了後に、人間性心理学でいうセラピストの“自己一致”と“自己正当化”の関連性について考えさせられた。
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